歯科コラム
歯科助手がやってはいけない治療や仕事内容について【実例も紹介】
歯科助手は、歯科医師や歯科衛生士とは違い、国家資格が要らないため誰でも働くことが可能な職種です。
歯科助手経験が長いと知識やスキルが増えますが、良かれと思って歯科医師が度を過ぎた指示を出してしまってからでは取り返しがつきません。
過去には、歯科衛生士の資格をもたない歯科助手に、「歯石除去」の治療をさせたなどの歯科衛生士法違反の容疑がかけられたケースもあります。
確かに、新卒の歯科衛生士よりも、10年以上長く働いている歯科助手の方が「仕事ができる」と思われるケースもあるでしょう。
しかし、どれだけ知識を重ねていて歯科医院の事情に精通していたとしても、歯科医師が任せる仕事を間違えてしまうと、それは「違法」となります。
また、歯科衛生士からは「私には任せてもらえないのに、どうしてベテランの歯科助手さんはやってもいいのだろう?」といったスタッフの不満にもつながります。
歯科医師、歯科衛生士、歯科助手のやるべき仕事をきちんと分けることは、正しい医療行為を遵守することであるのはもちろんですが、医療チーム力やスタッフ間の信頼を築くためにも有効なのです。
それでは、ついうっかり、院長や歯科医師が任せてしまいそうな「歯科助手がやってはいけないこと」を確認してみましょう。
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目次
歯科助手が患者さまの口内に触れるのはNG
歯科医師や歯科衛生士は、患者さまのお口に触れることはもちろん許されています。
しかし、歯科助手は「患者さまのお口に自分の手を入れる」だけで違法行為なのです。
以前は、歯科衛生士不足によって歯科助手が「レントゲン撮影」や「歯石除去」を行っていた時代もあったのは事実です。
ひと昔前なら、歯科医師は、保健所からの指導や注意を受けるだけで済んでいました。
しかし現在では、違法行為が見つかると歯科医師、歯科助手共に罰せられます。
違法行為だと知らずに、指示を出してしまったとしても、もちろん許されることではないため、業務範囲をしっかり理解しておきましょう。
歯科助手の業務範囲とは……?
歯科助手が行えるのは、主に、「事務業務」と「診療のサポート」です。
受付や会計をしながら、カルテの準備、レセプト作成、電話対応などを行う事務業務がメインです。
診療のサポートでは、患者さまのカウンセリングや診療室への案内を行います。
治療器具の準備を行うことで、歯科医や歯科衛生士が治療をスムーズに進められるように努めます。
その他、歯科医師や歯科衛生士が主に行わない、院内の清掃や洗い物、在庫の管理などの雑用業務も歯科助手が行います。
資格がいらないとはいえ、院内の全般の業務を行う必要があるため、知識や経験が必要になります。
資格がなくてもできる仕事ですが、歯科医院のマニュアルがあると歯科助手はより業務がしやすくなります。
最近では、歯科助手がトリートメントコーディネーターの資格をとって患者さまのカウンセリングを担当し、自由診療の集患数が格段に上がったという例があります。
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トリートメントコーディネーターが医院のファンを増やす!歯科助手が主役になる時代が到来?
歯科助手の違法行為の事例
何度も言いますが、歯科助手がやってはいけないのは「患者さまのお口に自分の手を入れる行為」です。実際に、歯科助手がやってはいけない事例を見ていきましょう。
- 歯石除去
- 表面麻酔、部分麻酔など麻酔全般
- 詰め物や被せ物のセット
- 歯を削る
- 印象採得
- 咬合採得
- フッ素塗布
- ブラッシング指導
これらは、歯科医師の指示の元であっても、歯科助手が行ってはいけない医療行為にあたります。
しかし、印象採得に関しては、患者さまの口内で歯型を取ることは禁止ですが、印象を練るのは歯科助手も行えます。
また、ブラッシング指導は患者さまの口には触れず、模型などを使用して行うのであれば可能です。「歯科助手」と名乗って、歯磨きの方法を説明するのは合法です。
というのも、そもそも保健指導は、誰が誰に行ってもよいのです。
親が子どもに歯磨きの仕方を指導するのも「保健指導」です。
ただし、歯科保健指導は、名称独占業務となっていますので、歯科助手であるにも関わらず「歯科衛生士」と偽って指導をしてはいけません。
スタッフを守ることが信頼や信用に繋がる
ベテランの歯科助手がプロービング検査をして、新米の歯科衛生士が記入する……。
先輩の歯科助手がスケーリングをして、1年目の歯科衛生士がバキュームをする……。
このような違法行為が、日常茶飯事に起こっているような歯科医院にならないようにしましょう。
新米歯科衛生士は、まだまだ歯科医院のことが分かっていない状況が多いでしょう。しかし、こんな状況におかれた歯科衛生士は、すぐに辞めてしまいます。
また、歯科助手としても、法律で定められた業務を超えた仕事をさせられることで、不満が溜まります。
もし、「今まで何も問題はなかったけど?」という場合でも、歯科助手の業務範囲を超えた仕事を任せるのは違法です。
法律で定められた歯科助手の業務範囲を理解することは、スタッフを守ることに繋がります。
患者さまからも信頼のおける歯科医院といった印象を持ってもらえますので、将来の歯科医院の繁栄にもつながります。
ささいなことと安易に考えず、必ず守るようにしましょう。