歯科コラム
レセプトって難しいの?〜業務の内容と進め方を徹底解説〜
「レセプトって難しそう」と、レセプトの名前を聞いただけで、苦手意識を持っている方も少なくありません。
しかし、医療業務をする上ではとても大切な業務で、避けては通れないものです。
医療事務の仕事の中で、「大変」「プレッシャー」と感じている方が多いのも現状です。
今回はそんな、レセプト業務の基本や流れを紹介します。
目次
医療事務のレセプト(診療報酬明細書)とは?
「レセプト」は責任感がある大切な業務です。
一般の方からすると、「レセプトってなに?」と、耳にすることも少ないかもしれません。
聞いたことがない業務をこれからするのは「大変!」と思いますよね。
ここでは、レセプトの基本知識や流れをみてみましょう。
医療業務に興味がある方にも、わかりやすく解説します。
レセプトとは?
「レセプト」とは、保険者に請求する「診療報酬明細書」のことです。
「診療報酬」とは、診察・治療・処方などの医療行為に要した医療機関に支払われる費用です。
患者さまは、病院で医療行為を受ける前に「保険証」を提示します。
保険診療では、患者さまが全額医療費を負担するわけではなく、患者さまと保険者の双方に請求し、支払われます。
この金額を保険者に請求するための明細書が「レセプト」なのです。
レセプトには、患者さまお一人お一人の診療報酬の内容が詳しく記入されています。
診療月ごとの入院・外来・調剤の項目にわけて記載されているため、レセプトを確認すれば、いつ・誰が・どのような診療を受けたのかを把握できます。
関連記事:レセプト請求とは?オンラインで請求する流れを解説!
レセプト業務の基本
患者さまのカルテに記載されている診療内容を、厚生労働大臣が定める様式に沿って作成します。
医療機関が異なる場合も、レセプトの書き方は統一されているのが特徴です。
項目別に点数が定められており、診療費に置き換えて算定します。
定められた様式に、ひと月分をまとめて記載するのです。
この業務を行うのが、医療事務のスタッフで、自己負担額が3割の場合、7割もの保険者負担分の金額を請求する責任のある仕事です。
間違いや不備があれば、差し戻しされたり、医療機関へ減額された金額で報酬が支払われることもあります。
レセプトの重要性
レセプトの仕組みは、日本の医療制度の根本を支える制度ということもできます。
レセプトには診療内容や処方内容、治療の詳細が記載されているため、適切な管理の元運用されれば、診療の質の向上につながります。
レセプトのデータは、医療制度、健康保険制度の運営にも重要な情報源として活用されるという側面も持ち、欠かすことのできないとても重要な役割を持っていることがわかります。
レセプトの流れ
レセプトを提出するのは、診療をした翌月の10日前後までと決められています。
電子媒体による請求の場合は、毎月10日までに管轄の都道府県労働局に提出する必要があります。
(参照:厚生労働省「4)請求・支払のQ1」より)
レセプト業務は、以下のような流れです。
- 診療の情報を入力
- レセプトを作成
- レセプトの点検
- 医師の確認と訂正
- 審査支払機関へレセプトを提出
レセプト業務は、作成するだけではなく、点検や医師への確認を行う必要があります。
「病名と処方箋があっているか」「薬が処方されているのに、病名がない」など1つずつ、細部までチェックします。
間違いや不備が発見された場合は、医師に確認してもらい、訂正をしてもらいます。
そして、期限までに提出を完了させるまでが業務です。
レセプト業務は難しいの?
レセプト業務を行うためには、医療事務のスタッフは、正しい知識と判断する目がなくてはなりません。
ミスをしない正しさが求められるため、大変な業務です。
そのため「レセプトは難しい……」と考える方も多く、「医療事務の業務はできるのだろうか」と不安にもなります。
とても、大変な業務です。
実務経験がない方は専門的な知識を持たないため、レセプト業務を行うことは非常に難しいといえます。
しかし、事前に医療事務の資格を受けたり、働きながら学ぶこともできたりと、やりがいのある仕事でもあります。
レセプトが難しいと言われる理由
以下、レセプトが難しいと言われる理由についてまとめます。
医療制度や診療報酬制度の複雑さ
日本における診療報酬制度は、点数表が診療内容に応じて細かく設定されているなど、非常に複雑です。
医療保険制度についても、社会保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など複数の種類があり、一度に把握することは困難です。
それぞれにルールが異なり、そのルールすら細かく変更されることもあり、最新情報に常についていくのは多くの人にとって難しいと言わざるを得ません。
医療用語やルールが専門的すぎる
レセプトを作成するためには、医療用語および専門的な診療内容など、治療の流れ全体を正確に理解していなければなりません。
医療分野の進歩は早く、新しい薬剤や治療などの情報に常に敏感である必要があり、そうした新しい根拠に基づいて報酬算定ルールは変更されていきます。
実際、令和6年における最新の診療報酬改定についても膨大な分量があり、全体を細かく把握するのは多くの人にとって非常に難しいと言えます。
業務の正確さが求められ、ミスできない
レセプト作成で万が一ミスをしてしまうと、診療報酬点数の誤りによって報酬減額に繋がったりレセプトが返戻されてしまったりし、大きな問題を引き起こします。
返戻されたレセプトを都度訂正するには当然手間やコストがかかりますし、報酬が支払われるまでの期間が長期化してしまい、キャッシュフローが計画通りに進まなくなる恐れがあります。
レセプトは審査基準が厳しい
保険者によるレセプトの審査の際、診療内容や報酬請求の適正性がチェックされます。
この審査は非常に厳しく、少しのミスでも返戻されてしまいます。
不明瞭な診療内容や保険適用範囲を超えた診療が行われていないかなど、把握できていなければ無駄に時間を浪費した上、診療報酬が支払われない可能性すら出てきます。
膨大な業務量
レセプトが難しいと言われるのには、膨大な業務量も一つの要因です。
月末月初の保険請求の締め切りに、一度にレセプト業務を処理する負荷は非常に大きく、同時にミスのない正確性も求められるとなれば、非常に困難な業務と言われるのにも納得できます。
以上見てきた通り、レセプトが難しいと言われる理由は、知識面での難しさのほかに、正確さ、審査の厳しさ、業務量の多さなど、複合的な要因に起因しています。
歯科医院としては、常に最新情報をチェックしながら正確かつスピードも意識して業務を実行していかなければならないという重圧に耐えうるスタッフを、レセプト業務の担当にする必要があります。
レセプト業務の乗り越え方
レセプト業務を効率よくこなしていくためには、自動化ツールやソフトウェア、レセプト業務の補助サービスなどを利用するのも一つの方法です。
また、レセプト業務が属人化してしまうと、負担があまりにも大きくなってしまうため、予備人員を配置するなど、複数人体制をとり、同時に新人教育などをしっかり行うことも非常に大切です。
難しいと言われるレセプトを最高の効率で処理していくために、事前の対策を立てて臨みましょう。