歯科コラム
「歯科医院を開業したいけれど、準備が大変そう……」といった不安がある方へ。
歯科開業までの期間や流れを知って、スムーズに開業ができるようにしておきましょう。
今回は、歯科開業に必要なものや成功するコツを解説します。
関連記事:成功している歯科医院が「開業準備で一番最初にしていること」は?
目次
歯科開業までの流れ
まずは、歯科開業までの適切な流れを知っておきましょう。
1.勤務先に独立を伝える
歯科医院を開業する方のほとんどは、もともとは勤務医として働いている方でしょう。
そのため、自分の歯科医院を開業するには勤務先を退職しなくてはなりません。
しかし、数ヶ月前に「退職します。」と伝えた場合、院長やスタッフに迷惑がかかります。
担当している患者さんの治療の引継ぎや挨拶も済ませておけるように、歯科医院を開業する1年前には伝えておきましょう。
2.開業する歯科医院の構想(ビジョン)を練る
以下を参考に開業したい歯科医院の構想を練りましょう。
- 医院のコンセプト:矯正歯科を中心に行う
- 開業場所:ファミリー層の多い住宅街
- 内外装のデザイン:子どもから大人まで通院しやすい明るい内外装
- 機器関係:電子カルテ、レセコン
- 資金調達:融資資料、金融機関
歯科開業の目的やコンセプト(診療方針や診療科目、患者層のターゲティング)を明確にします。
どのような地域で、どんな患者層に向けて歯科医療を提供するか、また他院との差別化を考えます。
診療科目やターゲットとなる層を踏まえながら、内外装のデザインを決めていきます。電子カルテやレセコン、機器関係をどこまで揃え準備するのかを決定していきます。
そのための資金をどうするのか、融資、金融機関などを検討します。
3.歯科医院開業の計画を立てる
構想した内容をもとにいよいよプランニングを始めます。
開業までのスケジュールを設定し、必要な手続きや準備を段階的に進めていきます。
1.事業計画書:資金を調達するために、おおまかな計画を立てておきましょう。
困ったときは、コンサルタントの意見も取り入れながら、各機関の記入例をもとに記載しましょう。
決められた形式はありませんので、「日本政府金融金庫」のテンプレートを参考にご確認ください。
この段階で、開業地を選定し、物件を探します。
同時に、開業する地域の調査を行い、競合歯科医院の状況や患者需要を把握します。
周辺の人口分布や診療圏を合わせて分析することで、適切な場所を選定します。
物件探しにおいては、診療所に適した広さや設備、駅など公共交通機関からのアクセス、駐車場の有無と広さも考慮します。
賃貸物件か、購入するかも決定しなければなりません。どちらにも一長一短ありますので、賃貸と購入のメリットデメリットを踏まえて慎重に判断しましょう。
2.融資可能額の確認:開業には初期投資が必要です。
建物の改装費や設備導入、広告費、人件費などを含めた資金計画を立てます。
事業計画書が完成したら、実際に融資が可能か、銀行や金融機関を確認します。
融資の際には、事業計画書の作成が求められますので、開業後の収支計画をしっかりと練ることが重要です。
融資先の機関は、以下が挙げられます。
- 日本政策金融公庫
- 民間の銀行
- 福祉医療機構
- コンサル会社
- 医療機器などのリース会社
3.土地や物件を決める
開業したいコンセプトに合わせた土地や物件を選びましょう。実際に開業地に足を運んで、融資金額に合わせて絞ります。
4.歯科医師会や厚生局への相談
歯科開業に困ったことがあれば、「歯科医師会」や「厚生局」に相談すると開業の準備や必要書類などを教えてもらえます。
※歯科医師会の加入は必須ではありません。
4.本格的に歯科開業準備を進める
開業する半年くらい前からは本格的に準備を始めましょう。
以下のことを決定します。
- 土地や物件
- 内外装業者
- 導入する機器
- 融資先
土地や物件は決定できても、工事を行う会社がすぐに手配できるか、導入したい機器を開業までに輸入できるかはわかりません。
そのため、できるだけ同時進行で確認と決定を進めましょう。
内装工事・設備導入
診療所の内装工事を依頼し、診療スペース、待合室、スタッフルームなど、機能的なレイアウトを設計します。
診療に使う機器や医療設備(歯科ユニット、レントゲン機器、滅菌器など)も準備します。
省スペースを活用するか、患者に快適な環境を提供するかなど、院の雰囲気も考慮しながら設計します。
5.着工・開業前準備
歯科開業3〜4ヶ月前には、内外装業者の作業が開始します。
そのころには、以下の項目を決めておくとスムーズに開業できます。
- スタッフの採用
- ホームページの制作
- SNSの運用
- 診察台など大型機器の搬入
- 消耗品などの卸業者と契約
- 内覧会の準備
歯科医院の規模にもよりますが、スタッフの採用は開業3〜4ヶ月前から行います。
新卒の歯科衛生士や歯科医師を採用したい方は、夏ごろから採用を開始するとよいでしょう。
歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフ、歯科技工士など、必要な人材を採用します。採用後、診療所の方針に合わせた研修やオリエンテーションを行い、チームワークを形成します。
地域の方へのアピールだけではなく、求人を掲載するためにもホームページの制作やSNSの運用も開業前に開始します。
開業告知や、診療内容を周知するための広告戦略も立てておきます。
ポスティング、新聞折り込み、ウェブサイトの開設、SNS活用などが有効です。
歯科医院のブランディング・WEBマーケティングも意識して、ロゴや医院名、看板などを作成します。
また、歯ブラシやゴム手袋などの消耗品を取り扱う卸業者との契約も事前に済ませておきましょう。コンセプトに合わせて発注すると、患者さんからの評価にもつながります。
さらに、歯科開業直前に行う内覧会の準備を忘れないようにしましょう。宣伝方法や内装の飾り付け、プレゼントやイベントなどスタッフと構想を練ります。
関連記事:歯科ホームページ制作の流れ/発注から納品までの期間は?
6.歯科開業直前
歯科開業直前も気を抜かずに、以下の流れで進めましょう。
スタッフの採用と研修
開業1ヶ月前にはスタッフを採用しておく必要があります。
また、事前に研修を行うと開業後も安心して業務に専念できます。
内覧会のオープン
歯科医院開業前にプレオープンや内覧会を実施することで、地域住民や患者さまに歯科医院を知ってもらう機会を作ります。
地域の方が歯科医院に行くきっかけになるため、歯科医院のコンセプトや使用する機材、医院の雰囲気などをアピールしましょう。
「病気を治すため」の場所ではなく「歯を健康に保つため」の場所としても活用していただけるように、多くの患者さんに認知してもらいましょう。
保健所や厚生局への届け出
歯科医院を開業するために、役所に書類を提出する必要があります。
保健所や厚生局へ提出物をチェックして済ませておきましょう。
歯科医院開業には、以下の許認可が必要です。
- 保健所への届出(診療所開設届)
- 厚生労働省への保険医療機関指定の申請(保険診療を行う場合)
- 税務署への開業届出(個人事業主としての登録)
- 労働保険、社会保険の加入(従業員がいる場合)
開業前に以上の書類を正確に揃え、申請手続きを行います。
保健所の検査
役所に届け出を行っても、地域によっては保健所の立ち入り検査があります。
7.開業日
開業日を決定し、無事に歯科医院を開業する日を迎えたら、診療がスタートします。
患者さんの反応やスタッフの動きなどをチェックしましょう。
開業後は、診療の質を維持しつつ、患者との信頼関係を築いていくことが重要です。定期的なフィードバックを受け、改善点を見つけながら運営を続けます
改善するべき点は、会議を行ったり、マニュアルの作成をしたり工夫します。
歯科開業を成功させるために重要なこと
開業を成功させるには、
- 「コンセプト」や「患者層」などの明確化
- 地域の選択
- 内覧会の開催
- スタッフの働きやすさを維持
- 集客につながるようホームページを制作
などが重要です。
すばらしいコンセプトがあり、適切な地域を選んでも、患者さんに歯科医院のよさが伝わらなければ意味がありません。
チラシや口コミの宣伝はもちろん、歯科医院のホームページ制作やSNSの運用により多くの患者さんに歯科医院を知っていただけます。
歯科開業に必要なもの
最後に、歯科医院の開業に必要なものをまとめてご案内します。
必要な書類・許可
- 診療所開設届
- 保険医療機関指定申請書
- 税務署への開業届出書
- 労働保険・社会保険の申請
資金計画
- 初期投資費用(内装、設備、広告)
- 運転資金(人件費、光熱費など)
医療機器・設備
- 歯科ユニット、レントゲン機器
- 滅菌器、診療器具一式
- コンピュータ・カルテシステム
人材
- 歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフなどの採用
広告・マーケティングツール
- Webサイト、SNS、チラシなど