歯科コラム
医師と歯科医師の医療行為の範囲はどう違う?
医師と歯科医師、どちらも大学で専門的な勉強を行い、国家資格を得ることで仕事ができる職業です。
明治初期までは同じ資格でしたが、専門分野が異なることで「医師」と「歯科医師」に分類されたと考えられています。
今回は、医師と歯科医師の違いや業務の違いなどを解説します。
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目次
医師と歯科医師の違い
まずは、医師と歯科医師の違いを解説します。
医師とは
医師は「医師法」によって規定された資格です。
「医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」と定められています。
また、病気の診断、治療、予防、リハビリテーションなどの「診療」を行う場合は、国家試験に合格した後に2年以上の臨床研修を指定された病院で受ける必要があります。
医師国家試験は学校教育法に基づく大学において、医学の正規の課程を修めて卒業、あるいは卒業見込みの人が受験することができるとされています。
歯科医師とは
歯科医師は「歯科医師法」によって規定された資格です。
歯科大学や大学の歯学部で歯学の正規の課程を修めた上で、歯科医師の国家試験に合格して免許を取得する必要があります。
診療に従事する場合は、免許取得後に指定施設で1年以上の臨床研修が必要です。
歯科医師は、歯だけではなくお口の中や舌に関する病気、顎に関する知識がいるのがポイントです。
歯科医師になってからも、「小児歯科」「審美歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」など専門的な技術や知識を高めて診療にあたることもあります。
歯科医師の業務
一般的には、歯科医師の業務はむし歯や歯周病などのお口のトラブルから歯を守ることが知られています。
他にも、歯石の除去や入れ歯の製作、インプラントの手術、口腔がんの早期発見など幅広い治療や検診を行います。
歯科医院によっては、
- 小児歯科
- インプラント
- 矯正治療
- 歯科口腔外科
- 障がい者歯科
- 審美歯科
など、得意分野が異なることがあります。
開業医として業務をすることはもちろん、行政機関で公衆衛生に携わったり、高齢者施設を訪れて治療を行ったりすることもあります。
他には、学校や会社などの歯科健診を行う歯科医院もあるのです。
医師と歯科医師の医療行為の違い
「医師」と「歯科医師」の「医療行為の違い」をみてみましょう。
医師ができる歯科医療
医師は、歯肉疾患の治療、歯髄炎の治療等、いわゆる「口腔外科」に属する行為は、歯科医行為であると同時に医行為でもあり、従ってこれを業とすることは、医師法第17条に掲げる“医業”に該当するので、医師であれば、右の行為を当然なし得るものと1949年の厚生省(現厚生労働省)医務局長通知に記されています。
つまり、医師は、一部の歯科医療行為を行うことができるのです。
- 歯を抜く(抜歯)
- むし歯の治療(詰め物や被せ物を用いない)
- 歯周病の治療
などは、法的には医師が行っても問題がありません。
医師ができない歯科医療
歯科医療行為の中でも医師ができないとされる治療は、
- 人工物の被せ物や詰め物
- 入れ歯の製作や調整
- 歯列矯正
などが挙げられます。
医師は、むし歯や歯周病などで歯が欠けたり、失ったりした場合に人工物を用いて治療を行うことはできません。
また、被せ物や入れ歯などの調整や修復も行えませんので注意しましょう。
歯科医師ができる医療行為
歯科医師ができる医療行為は、むし歯や歯周病などの治療はもちろん、被せ物や詰め物、入れ歯の治療も行えます。
また、お口の中の腫瘍を早期発見したり、口腔がんの診療をしたりする口腔外科の分野もあります。
他には、顎の痛みや病変を検査・診断するため歯科医師はお口周りの知識も身に付けなくてはなりません。
さらに、口腔の疾患に対しての医療行為であれば、全身麻酔や呼吸の管理を行うことも可能です。
歯科医師ができない医療行為
基本的には、お口の中、お口周りの疾患やケガに対して治療を行うことができるのが歯科医師です。
身体の疾患に関しての医療行為は行えません。
また、歯科口腔への医療行為では麻酔を使用することができるため、勘違いされやすいですが筋肉内注射は歯科医療と関係がないため歯科医師は行えませんので注意しましょう。
基本的に筋肉内注射は、医師または医師の指示のもと看護師、助産師、保健師、准看護師が行います。
そのため、「新型コロナウイルス」のワクチン接種は、通常は歯科医師は行えません。
しかし、ワクチン接種のための看護師の確保が難しい自治体に関しては特例処置として、「条件付きで、集団接種のための特設会場に限り、歯科医師による接種が認められる」といった通達が厚生労働省から出されました。