歯科コラム
2022年5月現在、全国の歯科診療所の数は6万7764件です。(※1)
よく「コンビニエンスストアよりも歯医者の数は多い」といわれますが、実はそのコンビニよりも多いのが不動産屋やレストランで、それよりもさらに多いのが歯科診療所という位置づけです。
ちなみにバー・ビヤホール・酒場はさらに多く、ダントツで多いのが美容院&理容業であることが経済産業省のHPで発表(※2)されています。
ここまで数が多い歯科医院ですが、今後人口の減少が加速するであろう我が国において供給過多にはならないのでしょうか。また、安定経営を継続していくためには、どんな戦略をとるべきなのでしょうか。
※1 令和4年2月末に行われた厚生労働省の医療施設動態調査
※2 平成24年経済センサス活動調査(総務省・経済産業省)
目次
全国の歯科医院数の推移
平成8年(西暦1996)から令和2年(西暦2020)まで、全国の歯科診療所数の推移を表にしてみました。
歯科診療所数 | 前回比 | |
令和2年(2020) | 67874 | -626 |
令和元年(2019) | 68500 | -113 |
平成30年 (2018) | 68613 | +4 |
平成29年 (2017) | 68609 | +17 |
平成26年(2014) | 68592 | +436 |
平成23年(2011) | 68156 | +377 |
平成20年(2008) | 67779 | +1047 |
平成17年(2005) | 66732 | +1659 |
平成14年(2002) | 65073 | +2589 |
平成11年(1999) | 62484 | +3127 |
平成8年(1996) | 59357 |
歯科医院の数は減少傾向にある
この表にはありませんが、最新のデータによると、西暦2022年2月の歯科診療所数は6万7764でした。2年前の2020年の結果からみると110の歯科診療所が減少しています。
つまり、全国の歯科診療所数は、90年代~2000年前半にかけてはめざましく増加していましたが、2011年頃からは増加数が控えめになり、令和元年の2019年からは前年より減少傾向に転じています。
2020年以降はコロナ禍の影響もあったと思われますが、コロナ禍以前の2019年ですでに前年度マイナスとなっていますから、今後、歯科医院の数が減少していく傾向にあることは間違いないといえそうです。
人口に対する歯科医数は供給過多?
我が国の人口に対する歯科医院の数、歯科医師の人数は供給過多になっていくのでしょうか。
まずは、これまでの人口10万人に対する歯科医師の数(全国の平均数)の推移を表にしてみました。
人口10万対歯科医師数の年次推移
人口10万人に対する歯科医師数 | 前回差 | |
令和2年(2020) | 82.5 | +2 |
平成30年 (2018) | 80.5 | -1.9 |
平成28年 (2017) | 82.4 | +0.6 |
平成26年(2014) | 81.8 | +1.4 |
平成24年(2012) | 80.4 | +1.1 |
平成22年(2010) | 79.3 | +1.4 |
平成20年(2008) | 77.9 | +1.8 |
平成18年(2006) | 76.1 | +1.5 |
平成16年(2004) | 74.6 | +1.5 |
平成14年(2002) | 72.9 | +1.3 |
平成12年(2000) | 71.6 | +2 |
平成10年(1998) | 69.6 | +1.7 |
平成8年(1996) | 67.9 |
この表を見ると、全国の人口 10 万人に対する歯科医師の数は、90年代から増加しつづけています。2008年をピークに増加数が緩やかになっていたり、2018年に減少したりしたものの2020年には盛り返しており、全般的に常時増加傾向であったことがわかります。
歯科医師数が過剰な都道府県は?
都道府県別にみてみると、人口10万人に対する歯科医師数82.5人の平均を上回るのは、東京都 の118.4 人が最も多く、次に徳島県 112.6 人、福岡県104.1 人となっています。
最も少ないのが青森県の56.5 人、次に島根県58.1 人、滋賀県58.2 人 です。
平均以上を供給過多とみると、東京をはじめとする一部の地域に限り歯科医数が過剰な傾向があるものの、地方都市は平均以下であるため、地域によるといえるでしょう。
今後の歯科医の供給と需要のバランスは?
我が国の人口推移を見てみると、総人口は2004年の1億2693万人をピークとし、今後100年にわたり急激に減少の一途をたどる見込みです。
人口のピーク時である2004年の高齢化率は19.6 %でした。2050年には人口が1億人を切る9515万人となり、高齢化率が39.6%にまで跳ね上がることが予測されています。
こうして高齢化社会が加速したとき、歯科医院の役割がかわってきます。このことは、「歯科医不足の時代がくる!?超高齢化社会で高まる進化型歯科医療の需要」の記事でもお話させていただきましたが、歯科医院に求められる役割が変化するのです。
人口が減り、むし歯治療のために歯医者にくる患者がいなくなる時代が訪れても、その変化の波に乗っていける歯科医院が重宝される時代がやってくるでしょう。
時代の変化に対応するための戦略とは?
これからの歯科医院に求められる戦略としては下記があげられるでしょう。
- 地域医療(医科)との連携の強化
- かかりつけ歯科医としての機能の強化
- 在宅歯科診療の強化
- 介護、障害福祉関係機関との連携の強化
- 歯の健康からはじめる子育ての支援・食育
- 家族から子どもへ感染させない予防教育
- 気軽に歯科検診を受けられるイベントの企画
高齢化社会が加速する令和の歯科医院は、ただ、むし歯を治療するだけの古いスタイルからいち早く脱皮し、予防型・かかりつけ歯科医としての機能を強化・確立することによって地域医療との連携を図っていくことが重要になるといえそうです。
新たな取り組みを広報し、地域に浸透させるためにも歯科医院の公式ホームページの作成は役立ちます。しっかりとサポートさせていただきますので、ぜひご相談ください。