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テナント型歯科クリニックの適正家賃はいくら?都心部と郊外の差、医業収入の推奨割合について

歯科クリニックの安定経営を長く継続するためには、毎月の家賃がいくらであるかが重要ポイントのひとつです。

では、どのくらいの家賃が適正といえるのでしょうか。


歯科クリニックの家賃の推奨額は?

一般的な歯科医院で最も多い「テナント型クリニック」の場合、家賃の推奨額は、月額医業収入の6~8%程度と考えられています。

例えば、ひと月の売上が500万円の場合、その6~8%に当たる30万円~40万円が推奨される家賃という計算です。

つまり、家賃がそれを越えていると、将来的に安定経営を継続していくのが体力的に厳しくなる時期がやってくると想定されます。


厚生労働省が定期的に実施している医療施設調査によると、個人で開業している歯科クリニックの規模として、ユニット数3台が最も多いと報告されています。

ユニット3台で得られる年間売上目標額は、およそ6000万円。
内訳は、ユニット1台の年間売上目標2000万円×3台分です。

ひと月の売上に換算すると、先ほど例に挙げた500万円となります。


ユニット3台の歯科クリニックは、約20坪のスペースが必要です。

つまり、推奨家賃30万円~40万円の場合、1坪あたり1万5000円~2万円程度の物件を選ぶとちょうど良いという計算になります。


歯科クリニックの適正家賃の設定は難しい!

では計算通り、1坪あたり1万5000円~2万円程度の物件を選べばいいのか?というと、そういうわけではありません。

歯科クリニックの家賃相場は、立地・人流・競合などが1件ごとに異なります。同じ条件の物件はふたつとありませんから、適正な家賃を割り出す作業は簡単ではありません。

たとえ家賃15万円の物件であっても、周りに競合する歯科クリニックが多く、集患のハードルが高いエリアでは”安い”とは言い切れないかもしれません。

一方、カリエスの患者が多い住宅街なのに、競合する歯科クリニックが皆無のエリアでは、家賃が80万円であったとしても適正といえるかもしれません。

このように、歯科クリニックの適正な家賃相場を算出することは、非常に難しいものです。

院長がやりたい治療・めざしたい医院のスタイルを鑑み、そのエリアで集患できる層や数、競合に勝てるかなど総合的に検討した上で、適正な家賃が割りだせるのです。


どんなタイプのテナントなら予算内で選べる?

テナントといっても、駅前・駅直結型のテナント、大通りに面したテナント、ショッピングモール内のテナントなどさまざま。
街の規模や施設の人気度によっても、家賃相場が大きく変わってきます。

一例として、都心部の駅前・駅直結型テナントの場合は、1坪あたり2万円~3万5000円程度。ユニット3台に必要な約20坪の物件なら、家賃は40万円~70万円です。

一方、郊外の住宅地にあるテナントでは、1坪あたり1万5000円~2万5000円程度ですから、20坪の物件なら家賃30万円~50万円。ショッピングモール内テナントの相場も、同程度です。

そのほか、地方の大通り沿いのテナントの場合は、1坪あたり9000円~2万円程度とされています。20坪の物件なら18万円~40万円と割安ですが、地方の場合は駐車場がセットになっていることが多いので、その分、賃料が高くなります。

このように実際の相場と照らし合わせてみると、さきほどの月額医業収入500万円を想定した歯科クリニックの推奨家賃30万円~40万円では、都心部の駅前・駅直結のテナントを選ぶと体力的にしんどい経営になりそうだということがわかります。

そして、郊外の住宅地、ショッピングモール内、地方の大通りに面したテナントの場合は推奨家賃で借りられる計算です。


家賃がお得になる?メリットが多い医療モール型テナント

中には、クリニックの家賃がお得になるタイプのテナントがあります。

それは、開業医ばかりが入居している医療モール型テナントです。

周辺の相場よりも家賃が1~2割ほど安くなるケースが多い物件です。家賃のほかにも、周りがすべてクリニックであることから周知度が高く、安定した集患が見込めるというメリットは大きいでしょう。

ただし、多くの医療モール型テナントは調剤薬局が取り仕切っているため、処方箋が少ない歯科は優先度が低いといえます。

地方にいくと、オーナーである大地主が地方医療貢献のために作った医療モールがあります。それなら歯科も対象です。このケースでは、内装まで施工済みのことも多いため、開業コストが抑えられるというメリットがあります。

いずれも不動産業者には非公開の案件であることが多く、開業コンサルタント等から紹介されて入居に至るパターンが多いとされています。


家賃は高くても60万円に抑えたほうがいい理由

家賃が高くなっても「やっぱり好きな場所で開業したい、がんばろう!」という考えも、もちろんアリです。

それでも家賃は、高くても60万円くらいまでに抑えるほうがよいでしょう。

歯科開業医が金融機関の融資を受ける際、家賃が60万円を越えると厳しい判断につながりやすいことを覚えておきたいところです。